『決算書』って言葉を聞くと皆さん第一印象はどんな印象をお持ちになりますか。
ぱっと見、重た~い感じで一歩引いちゃう感じありませんか。
さらに『資産』『負債』『貸借対照表』『損益計算書』『キャッシュフロー計算書』のようなワードやコムズカシイ表も出されちゃったりすると、少し構えながら”それは後でええかな”とか”う~ん今はやめとこ”みたいな感じで後回しにしちゃうと思まいます。
そんな印象を持つ人が多いからでしょうか。分かりやすい、初心者向け、入門、簡単、基本 、ここだけ読めば分かる、やさしいctc.. 会計に関する書籍にはこんな文言がズラリと並びます。
『会計は小難しい、難解だ』というふうに感じている人がいかに多いかという事を示してますよね。
そんな前提を踏まえて今回紹介させていただく本は…大手町のランダムウォーカー著
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる世界一楽しい決算書の読み方です。
本書のキーワードにしてキラーワードは『世界一楽しい』です。なんとこのコムズカシイ会計・決算書の世界に’楽しい’を運んできてくれました。そして実際に読み解いていくと実際に楽しい読み方が分かるのです。
分かりやすいのは実在企業で会計を読み解くから
マクドナルドやユニクロやアマゾン、セブンイレブンなど普段から利用しますよね。
これらの企業の儲けの実態って興味がありませんか。
本書ではクイズ形式でどこに儲けがあるのかのポイントを読み解くことができます。
決算書を読み解くことのポイント・仕掛けを序文から引用します。
なぜ決算書は『難しい』と感じるか。一番の理由は『読んでも、自分事として理解できないから』という事です。つまり、最短で決算書を読む力をつけるためには、実在する企業の決算書を読むのが一番手っ取り早いのです。
中略
そのため、本書では個性豊かなキャラクターたちと一緒に、『実際の企業の決算書を様々な視点で読み解きながら、決算書の基本のキが自然と身につく』ようになる仕掛けをほどこしました。
決算書を読めることの最大の魅力は、読むスキルを身に着けた際のメリットが大きいという『実利』の面と、企業の隠された戦略を読み解けたときの面白さがあるという『謎解き』の面の両輪を兼ねそろえているところにあります。
著者である大手町のランダムウォーカーさんは『日本人全員が財務諸表を読める世界を創る』を合言葉にTwitter上で『会計クイズ』というイベントを行っており、例えばこんな問題が出ています。
損益計算書(数字)だけみるとウムムとなりますが、セブンイレブンだからちょっと見てみようと思いますよね。
損益計算書なのでどこで利益(損失)ができているかを読み解きます。
正解は選択肢②。損益計算書の売上高から紐解くと・・・
ポイントはフランチャイズ収入にあるようです。
フランチャイズ方式の仕組みとは・・・加盟店収入なんですね。だから利益率が高い!
セブンイレブンって単独のお店の売上高が儲けの原点じゃないんです!
フランチャイズ制を敷くことでオーナーからの加盟店収入が儲けの大部分なんですね。
だからコンビニはあんなにも積極的に出店するんですね。
出せば出すだけ加盟店収入が入ると!
このような会計クイズ形式の流れでストーリー化することで会計を読み解きます。
するとどうでしょう。けっこうすんなりと理解できるようになっています。
本書内ではユニクロとニトリ、無印良品の比較やコストコ、ドンキホーテの比較、Yahoo!とLINEの比較などモデル企業として紹介されています。
マル秘部分をチラ見する感じで読んでみましょう。
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方
ところで決算書の中身 財務3表ってなに?
1.貸借対照表 (バランスシート) B/S
本書では『財産に関する情報』をまとめたものが、貸借対照表である、という事を説明しています。
- 「会社にどのような資産があるか」という財産の状態
- 「その財産を誰から・どのように調達されているか」という調達の状況=負債及び純資産
- 「企業の財産がどのような形で運用されているか」という運用の情報=資産
本書からの一例を出すとメルカリとブックオフので比較をしています。
ぱっと見て分かる違いは店舗販売とネット販売、あとはメルカリって個人売買ですね。
ということは設備投資がほぼ必要ないんです。
一方でブックオフは店で在庫を抱えていますよね。
ポイントは固定資産と流動資産で違いが出るということ。
ブックオフの場合は固定資産、メルカリは流動資産になります。
同じ中古販売同士なのに資産形成がまったく違うっておもしろくないですか。
2.損益計算書 (プロフィット&ロス・ステートメント) P/L
次に損益計算書ですが、これを企業の1年間(特定期間)における成績表と説明しています。
1年間の成績表と言われたら学校の通知表のようで馴染みが出てきますね。
目が痛くなるような実物の損益計算書も図解化したらこの通り。一気にシンプルになりました。
ちなみに利益と損失が出た場合で表の位置が変わります。
利益が出たら左の借方へ、損失が出たら右の貸方になります。下の表は利益が出たパターンです。
導入部分はこんな感じですが、5つの利益についても下記のようにグラフを使って説明しています。
5つの利益も違いが良く分からないですよね。
要は売上高からの引き算です。
詳細に説明されているので本文を読み進めながらみていくとより腹落ちしますよ。
3.キャッシュフロー計算書 (キャッシュフローステートメント)C/S
最後にキャッシュフロー計算書です。ちなみに私は大学時代まったく理解ができていませんでした。
黒字倒産って聞いたことあると思いますがそこにも密接に関わってきます。
※黒字倒産:現金が無くなってしまったために仕入れ代金が支払えなくなり、倒産に至ること。
ポイントは企業の「3つの活動」です。
- 営業活動によるキャッシュフロー
:本業の営業活動による現金預金の増減。ここがプラスなら投資や株主への利益還元が可能。
- 投資活動によるキャッシュフロー
:固定資産や株式などの投資による現金預金の増減。マイナスだからダメ!という事はない。
『事業拡大を目指した動き』を取れているかどうかが見るポイント。
- 財務活動によるキャッシュフロー
:資金調達や、借入金の返済等による現金預金の増減。
これらの3つの活動を通じて、その企業の現金預金がどれくらい増減したかを計算する書類です。
具体的な動き方の一例として下記の図解を参考にしてください。。
本業で資金を獲得し(+)、その資金で投資し(-)、足りない分を借り入れ(+)になります。
いわゆる積極型のキャッシュフローと言われ、事業拡大フェーズの企業に多い動きになります。
LINEやメルカリなどはこの積極型C/Fになる一方で、不正会計問題で揺れた時の東芝は救済型C/Fになります。営業CFが-、投資CFが大幅+(東芝メモリを売却)、財務CFも+でした。これを意味するものは営業活動から資金を得られず、やむなく事業を売却して資金を確保するしか方法がなかったと解説されています。
会社の状態によって十人十色の表情になることがよく分かります。
本書ではこの積極型C/Fや救済型C/Fも含めた全6モデルについての紹介と解説があり、企業の特色ある動向パターンを視覚で理解しながら知識を得ることができます。
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方 [ 大手町のランダムウォーカー ]
決算書を読み解けたその先に見えてくるものとは・・・
本書の特長は『馴染みのある企業の財務諸表をシンプルに図解化し、分かりやすいイラストを使って違いを明確化し、会計クイズとして展開する』という点です。
謎が解けた企業に対しては達成感とともに興味も湧いてくるものです。
その企業に対して「株でも買ってみようかな」なんて次の方向性が見えてくるかもしれない。
経営者目線も自ずと身につくことになります。
話題をさらったあの企業、もう少し深いところまで探ってみようと次の一歩を踏み出せるかもしれません。
私自身は2020年の1~3月期に四半期決算で1兆4,000億の赤字を報告したソフトバンクに興味が出ました。
プロ野球チームと通信キャリア、Yahoo!、PAYPAY、孫さんがアリババの株主くらいしか知識のなかった私ですが少し深堀りしてみただけで面白いコトこの上ない。
今回の赤字のポイントをまとめると・・・
主要事業の1つであるファンド事業を担っているビジョンファンドが主要因であり、なんとその営業損失額が1.9兆円!!
ビジョンファンドが投資をしている88社の内の1つである貸しオフィス企業のWeWorkだけで8,000億、配車関連企業であるUberが5,600億の赤字、インドのホテル事業を担っているOYOも目立つ赤字ということで、必ずしもすべての事業が業績が悪いわけではなく、ファンド事業の一部に引っ張られていることも分かりました。
裏を返せば挽回の余地は十分に残されているという事です。
その上で動画アプリのTikTokやSlackなんかもビジョンファンドが出資している企業なんだと知れました。
ソフトバンク自体がいろんな企業にめっちゃ出資してるやんと改めて理解を進める事もできました。
これらを踏まえ、本書を読むことで財務3表を読み解ける楽しさを得た後は、個別企業に興味が向かったり、投資について真剣に考えてみたりと次へのレベルアップににつながる道が開けています。
会計クイズについてはExcelを使って自ら出題者になれる作り方も指南されています。
TwitterやInstagramなどのSNSをつかっての勉強会や会計クイズも定期的に出されています。

ぜひ本書を手に取って新たなフィールドに立ってみましょう。自己革新を起こせるかもよ!