2021年春から夏にかけて書店をにぎわせている一冊のビジネス本。
それはたった4年弱でマザーズ上場を果たした識学社長である安藤広大さんの『リーダーの仮面』です。
『識学』とは組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決するかを明らかにした学問であり、それをマネジメントコンサルタントとしてサービス展開しているのが株式会社識学です。
この本はリーダーになろうとしている、またはリーダーになったばかりの人がどのような視座を持って仕事に取り組めばよいかという指南書になります。
【仮面をかぶる】というたメタファー表現を印象的につかってリーダーの持つべきブレないための軸を5つのポイントで紹介しています。
【リーダーの仮面】読後の印象
読後の印象は、これはまさに中間管理職になりたての人たちに向けたメッセージだな、ということです。
まず冒頭に5つの問いかけがでてきます
1.『いい人』なろうとしていないか?
2.『待つ』ことを我慢できるか?
3.部下と『競争』をしていないか?
4.『マネジメント』を優先しているか?
5.『辞めないかどうか』を気にしすぎていないか?
みなさんどうでしょうか。
どうしても良い顔をしたくなったり、早く仕事を進めてあげようとか、チームの雰囲気をよくしようなどなど、チームの輪を作るためにすべてにNOと言える人はいないのではないでしょうか。
『識学』の掲げるリーダーがあるべき姿の回答はこうです。
1.『いい人』であるままでは『なぁなぁの関係性』になりやすい。平等性を保つために部下とは『距離』を取る必要がある。
2.結果が出るまでは『タイムラグ』が出る。援助の手を出すことで逆に失敗するチャンスを減らし、学ぶ機会を奪う事にもなりかねない。成長を呼び込むためには長期的な視点をもって『待つ』我慢が必要である。
3.現場の意見を聞くことは必要。ただ過去のやり方を押し付けて自分色を強めるなど部下を競い合うことはNG.やるべきことは情報を吸い上げて、判断することである。
4.たとえプレイングマネジャーとしての個人の成績が悪くても、『役割』として優先すべきはマネジャーの立ち位置。個人の数字は割り切って部下に指導できることが重要である。
5.会社が成長して、自分の成長を認識できれば、人は辞めないはず。社員の『辞める・辞めない』にコミットすべきではない。
いやぁ割り切りぶりが徹底されていますよね。
ただひとは感情の生き物です。どうしても緩い方、優しい方に流されてしまいますよね。
なので良くも悪くも中間管理職になりたて、というフレッシュな状態のときにこれらの姿を意識付けしておくということはリーダーとしての成長を飛躍的に伸ばす1つの手法なんだなと私は感じました。
自分の立ち位置となる1本の筋として持っておく。
後に出てきますが、少しのズレを感じたときに呼び起せるように記憶にとどめておくだけでも意識は変わるのかなと感じた次第です。
【識学の考え方】
ちなみに識学の考え方は以下の通りです。
『適材適所』や『モチベーション』など安易に使っている言葉をきっちり拒絶。。
やはり割り切って行動する、という事が重要です。
- 適材適所という言葉は存在しない
- モチベーションを否定する
- やる気を上げるは×、成長させるは〇
- 自己評価は評価としない
- 最初に『目標設定』をして仕事をまかせる、最後に『結果』を報告してもらい評価する
- できなかった事実を指摘する
- 『結果』『評価』のギャップを埋めることで『成長』する
リーダーの仕事とは『部下を成長させ、チームの成果を最大化させること』
『識学』におけるリーダー像の理念。
それはリーダーの仕事とは部下を成長させ、チームの成果を最大化させること
そのために意識することは日々のズレを無くすこと。
毎日の小さなズレも長い年月が経てば矯正の効かない大きなズレになってしまう。
このズレを5つのポイントをつかって正しい位置に戻して成長に繋げるという考え方です
リーダーの見るべき5つのポイント
5つのポイントの『最終目的』は長い目をもって部下が自ら育つことを待つようにすること
決して自分が目立ってはいけない、自分が引っ張ってはいけない。
ここで触れられる事例は識学ならではだなと、考え方を変えるきっかけになります。
ルール~場の空気では無く言語化されたルールをつくる~
最初のポイントはルール作りです。
”自由にしていいはストレスになる”という目からウロコの言葉も出てきます。
いざ『自由』を手に入れても逆にすることがなく、ある程度『縛り』があった方が良いと感じることはありますよね。
例えば長い休暇。何もしない自由はありますが、2.3日もすると退屈するでしょう。
またスポーツ・遊び・仕事などにしてもある一定のルール・規則があるからこそ快適に楽しめるし、安全に楽しめるし、競争が生まれます。
そのために大事な視点は【誰でも守れるルールにすること】
このルールを大事にすることが最初のポイントになります。
位置~対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションをとる~
この位置を理解する含蓄深い一文がありました。
位置によって『見える景色』が異なる。高い位置にいる人は遠くを見据えて決断できる。
また『言い切り』で部下に任せるということ。
指示は上から下へ、報告は下から上へと職責の立ち位置をわきまえた位置を意識する。
『事実』を指摘して『結果』を受け止める。
褒めるのは期待を大きく上回った時に限る。
正しいほうれんそう(報・連・相)をすること・させることは軸のブレない組織作りになるという点がポイントでしょう。
利益~人間的な魅力では無く、利益の有無で人を動かす~
集団をつくる(会社組織をつくる)理由がこの章で述べられています。
たとえはマンモス像を狩りに行く。
ズバリ集団をつくる理由とは、集団でものごとを成した方が得られる利益が大きいからです。
ここで求められることは個の強さではなく、集団としての強さです。
童話のスイミーのようですよね。
一匹では小さくても集団になれば大きな敵にでも勝てると。
結果~プロセスを評価するのではなく、結果だけをみる~
プロセスに口は出さずに結果だけに焦点を当てるということ。
事実を見ろ、ということでしょうか。
ここのポイントは自己評価では無く、他社評価(上司評価)を得ることが大事であるということです。
プロセスをいくら評価しても結果がついてこなければ業績は上がりません。
そして数字で出された結果は誰もが見て分かる他社評価になります。
他社評価を得るためには『結果』でみせることが一番という点は納得するところではあります。
成長~目の前の成果では無く、未来の成長を選ぶ~
ココでの命題『リーダーが先頭を走っていけない理由』ってなんだと思います。
それは組織の成長に繋がらないから、というのが識学の視点です。
伸びる組織はトップを走る先頭のメンバーとの差がどんどん縮まり、結果として全体が成長する。
トップを走るメンバーも次々に変わって」いくでしょうね。
そうなるとどうでしょう。
群れ全体のペースが速くなって組織のパワーアップに繋がるということです。
ここでのポイントは『まずは1回やらせてみる』ということ。
経験と共にしか人は成長しない、という視点が識学です。
分人思考としての識学なら取り入れやすい、、かも
また分人思考という考え方はご存知でしょうか。
平野啓一郎さんが掲げられた『本当の自分』とは何かという問いに対しての考え方の1つです。
要は家族といる自分、会社で働いている自分、友人といるときの自分。それぞれの対人関係ごとに見せる顔がすべて『本当の自分』であるという考えです。
この分人思考と識学の考え方ってマッチングすると思いませんか。
識学の考え方をすんなりトレースするにはハードルは高いと思うんです。
ただ『マネジャーとしての自分』を一つの分人と割り切って【識学】の考え方をトレースしてみる。
これならできるような気がしませんか。
リーダーの仮面をかぶるためにこれも自分の1つの分人だと割り切ってみる。
こんな考え方もアリなんではないでしょうか。
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