週刊ヤングジャンプで長期連載されているゴールデンカムイ
北海道・樺太・ロシアを舞台にしたアイヌの埋蔵金を巡るサバイバル冒険マンガです。
これまでのアイヌと違う切り口としては可哀そうなアイヌが登場するのではなく、明るく・強くておもしろいアイヌが登場する点です。
なのでドラマとしての明るさ・ポップさが受けているんだと思います。
気になる物語の舞台は日露戦争後の1905年以降。
個性際立つキャラクターの面白さやコメディ色、アイヌ独特の食文化と見どころが多くある作品。
2016年にはマンガ大賞も取りましたね。
10月5日からはアニメ第3部も始まります。今回の舞台は北海道を飛び越えて樺太へ。

ちなみにマンガサイト『アル』ではアニメ化を記念して200話まで無料公開しています。
そんなゴールデンカムイに魅せられてアイヌに興味をもった読者も多くいるのではないでしょうか。
そんな読者にうってつけの小説3冊と解説本1冊ご紹介。
読めばゴールデンカムイをもっと楽しめるだろう必読書を紹介します。
熱源 川越宗一著
いま一番旬なアイヌが表舞台となる小説である『熱源』
2020年1月に第162回直木賞を受賞した作品になります。
北海道、樺太(サハリン)、ロシアを舞台に実在の人物の軌跡を追える史実をもとにしたフィクションです。
熱源で描かれる時代は明治初期の1870年代から太平洋戦争末期の1940年代までの70年と比較的時代は現代に近いのも特長。
金田一京助や石川啄木など聞き馴染みのある人名が出てくるので親近感も湧きやすいですよね。
弱肉強食がはこびる世界情勢の中、日本人化されるアイヌ人、ロシア人化されるポーランド人。
人権とは、文明とは、教育とは、時代のうねりに翻弄されながらも【自分はどう生きる】という問いかけを与えてくれる作品。
文藝春秋の特設サイトもご覧を

静かな大地 池澤夏樹
時代は『熱源』と同じ明治初期である『静かな大地』
ただ舞台は異なり、こちらは馬産地として有名な静内地方が舞台。
明治維新後に淡路島からの入植者である宗方兄弟とアイヌの交流を描いた物語り。
アイヌとの共存共栄をはかりながら牧場を開拓する宗方三郎。
牧場開発の成功と喜び、和人との軋轢の中での絶望までを描く。
宗方三郎の姪が伝記として書き切る内容となってり涙腺が緩むエピソードも多数。
ちなみに北広島市の由来はこのエリアに広島県からの集団移住し、本格的な開拓を開始したことがきっかけになっているとの事。

いかに当時、北海道以外からの入植者で人口が増えたのだとよくわかります。
そしてそこで虐げられるアイヌ。
<滅びゆく民、という言葉がわたしは嫌いだ。 まるで放っておいたら滅びたかのような言いかた。 滅ぼす者がいるから滅びるのではないか。>
蝦夷地別件 船戸与一
学生時代に読みふけっていたハードボイルド作家船戸与一からも一冊。
その名もズバリ『蝦夷地別件』です。
18世紀末の北海道東部と北方領土。
田沼意次失脚後、松平定信が老中として活躍する時期の幕府に拠る蝦夷地開拓が物語の舞台。
アイヌ民族最後の蜂起と呼ばれる1789年の『国後・目梨の乱』に至るまでの背景・出来事を上・中・下巻の1800ページを超える壮大なスケールで物語ります。
最初は道東や国後島の中での出来事だったものが、幕府やロシアの思惑、それに伴うアイヌの状況も相まって日本全体の出来事としてうねりを上げていく。
主人公と呼べる存在のハルナフリの成長の振れ幅が圧巻であり、悲しい。
著者には珍しい日本国内が舞台であるものの、読んでいる限り日本感はまったくしない。
ちなみに船戸与一はゴルゴ13の脚本家でもあります。
アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 中川裕
マンガ「ゴールデンカムイ」の監修をしている中川裕氏による解説本
単なるゴールデンカムイの解説本ではなくてアイヌを深く理解するための解説本です。
著者自身がアイヌ文化研究の第一人者であり、学術的な視点も多数。
これを読むとゴールデンカムイが読みたくなるし、アイヌについてもっと深く知りたくなる。
考察:ガイジンに対する日本人の偏見の変遷
最近見たネットで週刊少年ジャンプで長期連載していた『こち亀』の事が載っていました。
曰くこち亀を読むと外国人に対する書き方、見え方が時代によって違っていると。

これってまさに正鵠を射ていると思うんですよね。
何者か分からず無邪気にイジれる存在だったものから、徐々に浸透しもはや身近な隣人ともいえる存在に。
たったこの50年だけでも外国人に対する見え方が変わっているという事実。
確かに自分自身の小学生時代だった80年代90年代を振り返ると外国人は学校のALTくらいしかいなかったように思います。ハーフなんか見た事がなかった。
2020年のいま、コンビニの定員として外国人留学生が働いている事実。
子どもの友達が外国人である事実。
国際結婚がある程度一般的になっている事実。
もう外国人がいることが生活するうえで違和感は無くなってますよね。
ファクトフルネスではないですが、こう思わずにはいられません。
時代は確実に変わっている。それも良い方に馴染みながら。
という事は1970年代以前、いや100年前の日本なんての外国人・異民族はどんな扱いを受けてたのかも想像がつきませんか。
マイナスにしか触れないですよね。
一部の日本人には理解があったとしても人権なんてあったもんじゃなかったんでしょうか。
アイヌという民族を通して先に挙げた小説『熱源』『静かな大地』『蝦夷地別件』では終わり方も残酷です。
決して幸せな終わり方ではありません。
でもこれが当時の実際の事実なのでしょう。
そういう意味では『ゴールデンカムイ』ではアイヌはアシリパのキャラクター性もあり、ポップに描かれていて悲観性を感じることが少ないです。
このゴールデンカムイが埋蔵金を巡る冒険譚としての着地点以外に、アイヌとしての生き様の着地点がどうなるのか興味が湧いてなりません。
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